フランスの食文化20(エピローグ続き)

 フォン(だし)やバターなどの油脂、酒類、香辛料など様々な材料を用いて作られるフレンチのソース。中には芸術作品と呼ばれるほど完成度の高いものもあり、まさにシェフの腕の見せ所なのかもしれません。

 ただ、料理とソースの関係を眺めてみると、ヌーヴェル・キュイジーヌ(「新しい料理」の意)へと移行するに伴い、ソースも変化を見せているようです。かつては主材料と主役を競っていたものが今や主材料の持ち味を高める引き立て役にと変わり、盛り付けもソースが皿一面を覆っていたものが、まるで絵を描くように軽やかで余白の美を感じさせるようなスタイルに変わり視覚的にも大きく変化しています。日本のフレンチは視覚重視なのか、ソースということを忘れそうになるほど申し訳程度に配されていることが多いようですが、これがないと画竜点睛を欠き料理の価値は下がるように思います。

 話はそれますが、昔読んだ本の中に、イタリア料理とフランス料理の違いを端的に物語る次のような表現を目にしました。「色調に例えるとイタリア料理はクレヨン、フランス料理は絵の具で描いた絵」なのだと。色彩がはっきりした鮮やかな色とパステルカラーの違いという意味かと思いますが、クレヨンと異なり絵の具は色々な色を混ぜることが出来るため、複雑な色合いを出せるということでもあり、これはソースにも当てはまるような気がするのです。

 濃厚さという点では、フランス料理や中国料理は油絵、日本料理は水彩画という気がするのですが、ちょっと飛躍すぎますかね。

 ソース抜きにフランス料理を語るわけにはいかず、ソースだけのために2回にわたるエピローグとなってしまいました。

 フランス料理をいただく時、ソースにもちょっと心を寄せると味わい深いものになると思いますよ。

 

 次回からフランスが統治していたベトナムです。