中国やフランスの国旗を街なかで見かけてその国のレストランと結び付けることはないのに、この国旗だと「イタリアンレストランだ!」と思ってしまいます。
西洋料理というとフランス料理が本流のように思いがちですが、原型はイタリア料理です。1533年、イタリアの名門貴族メディチ家のカテリーナがフランス王アンリⅡ世に嫁いだ際、お抱えの料理人も一緒に連れて行き、料理だけでなくマナーやナイフ・フォークに至るまでフランス宮廷内の食文化に大きな影響を与えたのが始まりです。
日本でイタリアンレストランが増え、オリーブオイルやバルサミコ酢、モッツァレラチーズ、バジル、ルッコラ等をスーパーでも手軽に買えるようになったのは、「イタ飯」ブーム以降のことです。
「イタ飯」というのはイタリアのご飯、すなわちイタリア料理のことですが、このブームは1980年代後半から1990年代前半のバブル期に起こり、日本にイタリアンを定着させ、現地の食材を一般家庭に普及させる契機になったともいえます。
また、スイーツの世界では、一世を風靡するほどのブームになったのが「ティラミス」で、その後、パンナコッタ、クレームブリュレ、タピオカ、ナタデココ、カヌレ等のブームもありましたが、広く、長く愛されているのはティラミスで、こうしてみると「イタリアン」は受け入れられやすい要素があるような気がしてなりません。
美味しいということは言うまでもありませんが、フレンチほどフォーマルではなく(居酒屋気分で食べられるところもあるほど)、料理自体もシンプルでわかりやすいこともあり、肩ひじ張らず気取りなく、でもちょっとおしゃれな気分でランチやディナーといったとき選ぶのは、私の場合、フレンチではなくイタリアンです。
あまり手を加えず、素材の持ち味を生かした調理法が多いというのも日本人に好まれるのだろうという気はします。
私が「イタリア食文化ツアー」に参加したのは、「イタ飯」ブーム後の1994年で、旅行期間はわずか10日間、それもイタリア滞在は8日間で、訪問したのはローマ以北(ミラノ、ヴェローナ、ヴェネツィア、フェラーラ、ボローニャ、フィレンチェ、ローマ)ですからイタリア食文化のごく一端に触れたにすぎませんが、次回からイラストでイタリア料理の特徴を見ていきます。