中国雲南省14(エピローグ)

 中国の観光地としてはマイナーな感じの雲南省、それもかなり奥まったところにある西双版納へ食研修として訪ねたのは20年および30年前。

 今はずいぶん変わっているのかもしれませんが、当時感じたことを少し吐露します。

 中国は都市部と農村との生活の差は驚くほど大きく、少数民族の多い雲南省はその象徴であるような気がしたものです。州都の昆明に比べ、西双版納のような田舎はめちゃくちゃ田舎といった感じで、子供たちの教育はちゃんと行われているのだろうかと心配になったほどですが、もしかしたらこれ上から目線だったのかもしれません。生物多様性が高く食材も豊富で文化的にも多様な地域であることは少数民族の文字や服装、食を通しても垣間見ることが出来ました。

 民族服といえば、服飾専門(趣味?)の方が買われた少数民族の衣装を着て、ホテルの一室でファッションショーまがいのことをして楽しんだことも懐かしい思い出です。

 海外旅行の同行者には様々な方がおられましたが、中でも忘れられないのは、何度かご一緒したことのあるJさん。かなり年配の方でしたが、わからないことがあればガイドさんに執拗なくらい尋ねられ(料理など、現地での発音も含めて)、帰国したら必ずまとめてシリーズで新聞に掲載されていました。

 面白かったのは、行く先々でトイレットペーパーを「ちょっと失敬」と言って収集され(10センチにも満たない長さなので、盗むというほどでもなく持ち帰るのに邪魔になることもありません)、ペーパーの幅を測って日本の物と比較し、これが積もり積もればどのくらい森林の損失になるかを緻密に計算されていました。紙質も記録されていたようです。

 トイレットペーパーは世界中で毎日使われている上、これはリサイクルできないので、資源の無駄遣いという観点からも意味のあるデータだと感服したものです。

 以来私はトイレットペーパーを見るたびに、用を足すのにこれだけの幅はいらないなあと、紙の幅が気になるようになりました。

 雲南省の締めくくりからはちょっとそれてしまいましたが、30年前の西双版納へはJさんもご一緒だったのでつい思い出だしてしまいました。蛇足ですが、つたない料理イラストを気に入って下さり、出版する本の表紙に入れたいと言っておられましたが、実現しなかったようです。

 

 次回からトルコへ飛びます。飛んでイスタンブール