モンゴルの食文化3(白い食べ物1-馬乳酒―)

 モンゴルの食べ物は遊牧民のライフスタイルと厳しい気候条件に基づき、夏は白い食べ物(乳製品)、冬は赤い食べ物(肉料理)といわれ、夏の期間(6~8月)は毎日家畜の乳搾りをして色々な乳製品に加工するのですが、乳製品の中で最もモンゴルらしいものといえば馬乳酒ではないかと思います。

 モンゴルでアイラグと呼ばれる馬乳酒は馬の生乳に酒母を加えて撹拌し発酵させたものですが、アルコール度数はわずか1%程度で酒というより健康飲料として日常的に飲まれています。

 馬の場合、一度に搾乳できる乳量は200ml程度ととても少ないため、1日に何度も絞るそうで(夏は1日に6~7回)、子馬にまず吸わせて乳汁分泌を引き起こさせ、途中から人間が搾乳するということで、それだけでも大変な手間を要します。

 採取した馬乳を木桶、陶製の瓶、牛の皮などの容器に入れて酒母を加え、ひたすら攪拌するのですが、ぐるぐるとかき回すというのではなく羽のついた棒を上下に動かしてつき混ぜるといった感じです。

 処分したと思っていた写真が残っていました。馬乳酒を撹拌しているところです。随分年季の入った容器です。

           

 攪拌は数千回にも及ぶそうでただひたすらかき混ぜるとは、何と気の長い作業!と思ったことです。

           

 馬乳酒を作る革袋もゲルの中にぶら下がっていました。

 ところで、馬乳酒はカルピスの生みの親でもあるのです。カルピス社の創業者三島海雲氏がモンゴルに滞在した際、馬乳酒のおいしさと健康効果に感銘を受けて乳酸菌飲料の開発を開始し、現在の国民的飲料カルピスが誕生したのだそうです。

 このように書くと馬乳酒ってカルピスの風味に似ているのかと思われるかもしれませんが、全く別物です。カルピス大好きの私ですが、酸味が強くて独特の発酵臭がする馬乳酒は苦手でひとくち口にしただけでした。

 馬乳酒は他の乳製品には及ばぬほどの薬効があるそうで、モンゴルの人たちにとって、馬乳酒は「酒」ではなく「薬」「食料」として老若男女を問わず飲まれているようです。