アメリカの食文化2(アメリカ1日目)

 アメリカでの食事はワシントンの昼食から始まりました。広場のカフェテラスで生のジャズ演奏を聴きながらのランチは心浮き浮きで、すごいボリュームの食事もあわせてアメリカに来たことを実感させるに十分なものでした。

 午後は自由時間。引率者にとっては嫌な時間です、私は、ホテルでゆったり過ごしていたものの、救急車の音がするたびにドキッとしたものです。全員無事帰って安堵したとはいえ、あとで聞くとぞっとするような話の数々、おまけに成田でカメラを忘れた学生がいたり、スーツケース紛失事件(ポーターが間違って別の宿泊客の部屋に運び夕方まで行方不明)もあったりなどで前途多難を思わせる1日目でした。

 ホテルでの夕食は、特記することもないいかにもアメリカといった感じの内容です。

 長い長い一日が終わり、食事を待っている間居眠りをする人が多かっただけでも、いかに疲れていたかがわかります。

 

 

アメリカの食文化1(プロローグ)

        

 初めてのアメリカは、1991年、英語科の学生28名の5週間にわたる米国研修旅行の引率でした。

 英会話力に乏しい人間が言葉に不自由を覚える国への引率は気が重く、寡黙な5週間を余儀なくされるだろうという不安は杞憂に終わりました。苦笑物の英語の連発の中に時には高度な表現も出るらしく、その落差がおかしいと学生たちに笑われましたが、会話らしきものが成立した喜びも味わえました。

 ワシントン経由で行き、ジョージア州のメイコンにある姉妹校で4週間近くの研修、帰りはサンフランシスコ、ヨセミテ観光というスケジュールで、研修中は大学の学生寮に宿泊し、食事は大学の食堂でカフェテリア方式というものでした。

 フィールドトリップやホームスティ先での食事も加わり、5週間の食事イラストはシール107枚にも及びました。当時の研修や学生たちの様子も割と克明に記録していますので、その中からできるだけアメリカらしさを感じられる食べ物やエピソードをピックアップしてみたいと思います。

 なお、2012年のハワイ、2019年のシアトル・バンクーバーも、合衆国、北米というくくりで取り上げたいと思います。

 

 

ベトナムの食文化8(エピローグ)

 限られた日数の中で食したわずかな料理でベトナムと日本の違いを比較するのはちょっと乱暴な気はしますが、何となく感じたことをいくつか挙げてみます。

 

 ベトナムは米生産量世界5位(日本は12位)を誇る国で、米を麺や春巻きの皮などに加工したものが多く、米粉で作る麺のフォーはベトナム国民食ともいえるほどです。日本もベトナム同様米の収穫は多いのに、そうめんやうどんは小麦粉から作られます。小麦は国内需要の8割以上を外国から輸入しているというのに、、、コメ生産に適した風土なのだからコメ余り政策として減反などしないで、もっと加工品として活用できないものかと思います。そのためには、私たちの食習慣や食行動を変えることも必要ではありますが。

 

 次に感じたことは、春巻きやバインセオのように包んで食べるものが多く、食べる人が好みの具材を包み、好みのタレをつけて食べるというある意味で食べる人のお好みでどうぞといったスタイルです。また、ご飯の上に様々なおかずをのせ混ぜて食べるのがベトナム流というのをテレビで見たことがあります。どちらも、味覚のハーモニーを奏でるのは食べる人ということになります。

 それに比べ、日本料理の場合は、料理人によって完成された料理、別の言い方をすれば押しつけ型といえるのかもしれません。出された料理が好みの味ではないからといって、食べる人が調味料を加えたりはしませんよね。

 ベトナムの料理は自由度が高く参加型、日本料理は完成度が高く押しつけ型といっては言いすぎでしょうか。

 

 また、盛り付けの美しさにも違いがみられます。ベトナムは、やや中国料理的な盛り付けで、大皿盛りが多く、野菜や果物の細工もスケールが大きいのに比べ、日本料理は松花堂弁当に見られるようにチマチマとした箱庭的な美しさ。

 

 プロローグでも書いたように、南北に細長く、北は中国、西はラオスカンボジア、東は南シナ海に囲まれ、歴史の様々な交流点となったベトナムは、食においても様々な文化が混ざり合った興味の尽きない国で、3泊4日はやはり短すぎる感は否めません。特に、屋台や市場を中心とした庶民の食にはほとんど触れていないため、心が残りもう一度行ってみたい思いに駆られます。

 

 次回から、ベトナムと戦争したアメリカです。

ベトナムの食文化7(ベトナムのフレンチ)

 ベトナム最後の夕食はフランス料理。フレンチレストランというとかしこまったイメージですが、ル コルドン ブルーはフランクなフランス料理レストランで店内では生演奏もしていました。「時の流れに身をまかせ」「神田川」「北国の春」など日本人の心情に訴えるような曲が演奏され、これらの曲はベトナムの人にも人気なのだろうと思うと同じアジア人としての連帯みたいなものさえ感じました。

 ちなみに、メコン川クルーズの後トロピカルフルーツをいただきながら聞いた曲は「支那の夜」「幸せなら手をたたこう」でした。

 以前、スコットランドで、日本人向きに「上を向いて歩こう」が演奏された時は、頭で理解してもしっくりこなかったのを思い出します。

 オードブル、パン、スープ、メインディッシュ、サラダ、デザート、コーヒーと献立構成はフランス料理そのものでしたが、オードブルの海老入り餃子やコンソメスープの味などにちょっとだけベトナムのテイストが感じられました。

 コーヒーもフランスの影響で、日常の食生活の中に定着している飲み物です。

 

 

ベトナムの食文化6(エレファントフィッシュ、グレートボール、チェー)

 メコン川クルーズの後、昼食をとったレストラン(mekong rest stop)は2009年に皇太子殿下(現天皇陛下)が訪問されたとかで、入り口にはその時の写真が飾られていました。

 メインはメコン川でとれた「エレファントフィッシュ」を鱗ごと揚げた唐揚げです。像の耳のように大きな魚ということでこのように呼ばれています。ライスペーパーに青菜と果物、麺と一緒に包んでタレ(ヌクマム)をつけて食べるというのが一般的な食べ方のようで、このレストランの名物料理です。

 パンパンに膨らんだ大きな丸い揚げ餅(グレートボール)は初めてみる形ですが、ほんのり甘いもち系のパンといった感じです。

 デザートのぜんざいは、ベトナムの伝統スイーツの代表格である「チェー」。ココナッツミルクに煮豆や芋類、フルーツ、寒天やタピオカなどを加えた伝統的なデザートで、温かいものは日本のぜんざいに似ており、また、氷を入れて冷たくすればかき氷のような味わいにもなり、具材・食べ方ともにバリエーションが豊富で、飽きの来ない日本人向きデザートという気がします。

 タピオカブームの次は「チェー」ということにならないですかねー。

 

ベトナムの食文化5(宮廷料理2、バラ彫りスイカ)

 前回、ベトナムの宮廷料理は見た目の美しさが特徴と書きました。

 その象徴ともいえるのがバラ細工のスイカでした。

 ベトナムの料理で真っ先に思い出すものは?と問われてすぐに頭に浮かぶのはバラ彫りスイカ。出てきたとき一斉に「おー!」と思わず感嘆の声が上がったほど強烈なインパクトがありました。半分に切っただけならただのスイカ。食べるのがためらわれるほどの芸術作品にまで高められたスイカはさすが宮廷料理を締めくくるにふさわしいものでした。味は変わらないのですけどね。

 スイカインパクトが強すぎて他の物はほとんど忘れていたのですが、寒天やクリアガーで作ったデザートもフルーツの盛り付けも手が込んでいます。

 ヌードルはレモングラスの香りと酸味のすっきりとした味わいで食欲が進みました。

 

ベトナムの食文化4(宮廷料理、春巻き)

 知人の紹介で行ったベトナムの宮廷料理。

 宮廷料理は約150年にわたってベトナムを統治したグエン王朝時代に歴代皇帝が愛した料理で、こだわりは見た目の美しさ。古都フエはベトナム中部の都市で、この地は豊かな南部に比べ食材が限られているため、いかに美しく盛り付けるかが大きな特徴といわれており、ネットで見た宮廷料理は野菜などに細かな細工が施され、見た目もとても華やかです。

 私達が食べた宮廷料理はそこまでのものではなかったのですが、それでもまず感じたことは盛り付けの美しさでした。

 春巻きもハムも放射状にきれいに並べられ、皿の中央にはトマトで細工した花が飾られていました。

 海老入りのタピオカでんぷん蒸しは、透明なタピオカを通して見えるエビが何とも美しい!

  左の料理はバインセオと思いますが、盛り付けや食材は昼食で出たものとは幾分異なります。

  生春巻きは、ライスペーパーで肉や野菜を自分で包んで食べるタイプです。

 一口に春巻きといっても、春巻きの皮も包む具もバリエーションが豊かです。

 左の春巻きはライスペーパーではなく、葉で麺とエビを包んだもので、皿の真中には大根と人参で鶏の形に細工したものがさりげなく飾られています。

 もう一つの春巻きは、パリッと焼いたライスペーパーで包むタイプで、皮の食感と香りも楽しめます。包む中具は一見地味な浅蜊と香草ですが、これだけの浅蜊の実を殻から取り出す手間を考えると、宮廷料理ならではという気もします。

 デザート類は次回。