フランスの食文化2(生牡蠣、シャンソン)

 まずは初めてパリを訪れた時の夕食から。

 実はこの時は、料理イラストはなく料理名のみの記録しかありません。最初に出てきた魚貝類のオードブルがあまりに見事で描くのをあきらめたためです。

 日本では牡蠣といえば牡蠣フライや土手鍋等加熱することが多いのですが、フランスでは牡蠣を加熱調理するのは一般的でなく基本的に生牡蠣が主流で、この時も砕いた氷が敷き詰められた大きなシーフードプレートにエビや貝類などと一緒に、生牡蠣がこれでもかといわんばかりに盛られ、度肝を抜かれました。

 ボリューム満点のシーフードの盛り合わせだけが強烈に頭に焼き付いていて他の料理はすっぽりと抜け落ちていたのですが、記録をみるとエスカルゴ、伊勢海老、ラムステーキ、それに各自それぞれ好みのデザート(ちなみに私は「シューアイスチョコレート掛け」)といった具合で、美食の都パリらしい料理満載だったのです。

 生牡蠣のオードブルにびっくりしたのは量だけでなく夏に供されたという点です。真牡蠣の旬は冬で、月の英語表記でRのつかない月(6~8月)には食べない方がよいといわれ日本では夏に食べたことはほとんどなかったからです。フランス人にとって牡蠣は外せない料理のように思えてなりません。

 ところで、私は基本的に二枚貝に弱く、これまでも牡蠣、ムール貝浅蜊で食あたりした経験があるため、旬でない時期の生牡蠣は警戒していたのに、誘惑に負けてしまい翌日正露丸のお世話になるという顛末に。

 夕食後、シャンソン酒場でパリのナイトライフを思いっきり楽しんだのですが、地下鉄の終電時間はとっくに過ぎタクシー乗り場には長蛇の列、結局就寝が午前3時過ぎというわけで疲れも加わったためのダブルパンチではなかったかという気がしています。

 シャンソンの魅力に取りつかれ、次の日も出かけ、スペイン・ポルトガルでの食研修を終えた解放感も手伝い思いっきり羽を伸ばしたパリの夜でした。