チェコ・ポーランドの旅18(マリアン・コウォジェイ氏の絵)

 アウシュヴィッツからの生還者であるマリアン・コウォジェイ氏による絵がビルケナウ収容所の近くにあるフランシスコ修道会の教会の地下室に展示されています。囚人たちが搬送された貨車や有刺鉄線、ベッドなども配置され、まるで収容所のような空間です。骸骨を思わせるほどやせ細り、目だけはしっかりとこちらを見据えている不気味な人間の絵がこれでもかというほど展示され、目撃者として証言せずにはおれない鬼気迫る思いが伝わりました。特に、収容所時代のコウォジェイ氏が、自分の手を握らせて絵を描かせている作品は、不気味ですが強烈な思いの伝わる絵でした。

 コルベ神父に関する作品が多かったように思います。

 コウォジェイ氏は戦争の終わりごろ死刑のためにアウシュヴィッツへ送られたのですが、事務処理をしていた彼の友人がコウォジェイ氏を死刑執行リストの一番下に入れたため、処刑を免れ生還できたとの説明を受けました。人間の運命は紙一重の差で分かれるのだとつくづく思います。こうした生き残りの人たちによって語られるホロコーストの実態は臨場感があり戦争の悲惨さを伝えるには説得力があります。

 「壁の両側」を読んだとき、著者が絶体絶命の危機を何度も乗り越えてよくぞ書き残せたものと感謝せずにはおれませんでした。

 クラクフのカジュミエシュ地区にあるユダヤ料理レストイランでイスラエルのクレズマ音楽を聴きながら、最後の夕食を楽しみました。私にはユダヤ料理の特徴はよくわかりませんが。