ベトナムの食文化2(クチトンネル、キャッサバ)

 まず訪れたのはホーチミンから車で約1時間半のクチトンネルでした。ベトナム戦争中に、南ベトナム民族解放戦線(通称ベトコン)によってゲリラ戦の拠点として作られた巨大な地下基地で、カンボジアの国境付近まで張り巡らされた全長250kmのトンネル内には数千の人々が暮らしていて、当時の生活の様子や戦争中に使われた罠の数々が、戦争史跡公園として残されています。

 恐怖を覚えたのは至る所に仕掛けられている「ブービートラップ」といわれる罠です。布と枯れ葉で隠した穴の上に踏み込むと、毒が塗られた針の上に落ち一瞬のうちに人間が串刺しにされてしまうという何とも残酷なものです。ベトナムのガイドさんが淡々と語られる米兵による拷問の話もあまりのひどさに耳をふさぎたくなったほどです。クチトンネルで感じた恐怖はアウシュヴィッツと規模は異なるものの、同質のものでした。

 クチトンネルの構造はとても複雑で、一見するとどこに出入り口があるのかわかりません。葉っぱで覆われた四角いマンホールのような蓋を開けると狭い穴が出現しトンネルの中に入ることができますが、この穴は、細身の人が万歳をした状態でかつがつ入れる程度の大きさですので、試してみるのは勇気が必要でした。

 アメリカ軍は、度重なる空爆枯葉剤の散布により敵の壊滅を狙いましたが、兵力や物資の面で圧倒的に劣っていたはずのベトコンは地下に潜ってゲリラ戦を展開し、勝利を勝ち取ったのですからクチトンネルはまさに、ベトナム人の知恵と忍耐の象徴といっても過言ではないと思います。

 パレスチナ自治区ガザ地区の地下にある深さ数キロメートルに及ぶ無数のトンネルが、人間や物資の運搬、ロケットや弾薬の保管、更にはハマスの指令室としても使用されているといわれているのに対して、クチトンネルはいわゆる生活の場で、それが数十年も続いたのですから、、、

この日は2回おやつをとりました。

 1回目は、クチトンネルの休憩所で食べたキャッサバとベトコン茶。生活の多くをトンネル内で過ごした人たちにとっては命を繋いでくれた食料だったのだろうなと、当時に思いを馳せながらいただきました。

 2回目は、昼食後、博物館や郵便局、聖マリア大聖堂、ベンタイン市場見学の後。ベトナム風ぜんざい(チェー)はタピオカ、ココナツミルクが入っていておいしかったのですが、夕食を空腹感で臨めなかったことは残念でした。