デンマーク4(「バベットの晩餐会」2)

 1989年2月23日(大喪の礼の前日)に体験した「バベットの晩餐会」、会費22,000円は映画と料理で得られた感動を考えたら高いとはいえないのかもしれません。

料理もワインもほぼ映画に忠実に再現されていました。

  料理は「海亀のスープ」から始まり「キャビアのドミドフ風」「鶉のフォアグラ詰めパイケース入り」「サラダ」「チーズ盛り合わせ」「ババのラム酒風味」「フルーツ盛り合わせ」と続きます。

  世界の三大珍味(トリュフ、キャビア、フォアグラ)をふんだんに使っているだけでもレベルの高さが想像できると思います。

「海亀のスープ」については、将軍が「間違いなく本物の海亀のスープです。実に素晴らしい」と言っていたので、当時も“もどき”が多かったのかもしれません。

  オードブルは「ブリニのドミドフ風」。キャビアと最もよく合うといわれるブリニ(薄く焼いたパンケーキ)の上にはキャビアがたっぷり盛られていて驚きでした。

  鶉の料理を一口食して将軍が語る話は、この映画のクライマックスともいえる場面ですが、これは映画を見ていただくしかありません。

 チーズはフランス語でフロマージュ。フルム・ダンベールは「高貴なブルーチーズ」と呼ばれている青カビタイプのチーズですが、私は個性の強いこの手のチーズが苦手で、たいていスルーしてしまいます。

「ババのラム酒風味」は映画ではとてもおいしそうに食べていましたが、再現のものはちょっと期待外れでした。

 フルーツを手に取った将軍のセリフ「こんな見事なブドウ見たことありますか」からも、最後まで手抜きをしない完璧なディナーであったことがわかり、それだけにこの日のフルーツにマスカットが入っていなかったことがちょっと残念でした。

 ワインは食前酒の「アモンティリヤード」から「ヴーヴ・クリコ」「クロ・ヴージョ」へ移り、食後酒の「フィーヌ・シャンパーニュ」へと至る豪華版です。といっても名前だけでは想像できないので、メニューカードに記載されていた説明とネット情報で補足します。 

アモンティリヤード:辛口のフィノをさらに10年以上熟成させた濃い色と高い香りを持つシェリー酒。アラン・ポーの小説「アモンティリヤードの樽」はこの美酒の魅力で地下室に誘いこんで殺してしまう話で、それほど人を誘いこむ酒。

ヴーヴ・クリコ:「クリコ未亡人」と呼ばれる最高級のシャンパン。彼女は、若くして急逝した夫の遺志を継ぎ「品質はただひとつ、最高級だけ」という信念に基づいて、世界的なシャンパンメーカーへと成長させた人です。映画の中では村の女性の発した「レモネードみたい」の言葉と、この酒を一口飲んだとたん「1860年だ!」と表情もしぐさも変わり感嘆する将軍の姿が印象的でした。ヴィンテージ・シャンパンなのでしょう。

赤ワインのクロ・ヴージョは1845年もの、将軍がお替りを所望し、給仕がテーブルにボトルごと置いていました。

 村人が将軍の真似をして飲食している姿はちょっと滑稽なのですが、いずこも同じという気もして微笑ましさを覚えます。

 料理とワインについてほんのさわりの部分だけ紹介しましたが、ぜひ見ていただきたい映画です。

 

 13日から旅行しますので、ブログはちょっとお休みします。