イギリス5(ジビエ)

   スコットランドのレストランでの昼食。

 とても感じの良いご夫婦が経営されているこぢんまりとしたレストランで、料理もイギリスにしては結構手が込んでいて話も弾み、食後キッチンを見学させていただきました。

 イラストを見ると6種類も料理があるように見えますが、他の方の分も描いたためで、基本はオードブル、メインディッシュ、デザートで、私が食べたのは上に描いた3つです。

「鹿肉のパイ」を注文された方は、自分で選ばれたのに「鹿を食べるなんて、かわいそうねえ」などと言いながら口にされていました。

 こんな情景を見ると、昔読んだ「肉食の思想-ヨーロッパ精神の再発見-」(鯖田豊之著、中公新書)を思いおこします。初版が1966年ですから半世紀以上も前に書かれたものですが、「肉食」をキーワードとした比較文化論の展開は今読んでも色あせず、再度読んでみたい思いに駆られます。

 野生動物の肉をフランス語で「ジビエ」といい、日本でもイノシシやシカを使った鍋料理などはありますが、西欧に比べるとマイナーな存在です。

 1990年代以降、「ジビエ」への注目度が高まってきましたが、その背景には、野生のシカやイノシシなどによる農作物の被害が増え続けてきたことがあげられます。

 野生動物による農作物の被害を少しでも食い止め、捕獲後の肉を活かしたら一石二鳥のような気がしますが、専門の解体処理施設が少ない日本では供給面でのむつかしさがあるようです。

 それに、牛・豚・鶏肉に比べて低脂肪かつ高タンパクというヘルシーさが注目されているとはいえ、嗜好性の点も含めて「ジビエ」の浸透はまだまだ先のような気がします。